チラシの裏の落書き日記

統計とか,研究とか,日常についての備忘録的なもの。

研究について,最近思うこと

 研究を行う上で非常に重要なのは,やはりどのような問題に決着をつけるべきなのかその問題を見極めることだと思う。問題を設定するために,はじめは指導教員や先輩の研究者などに教えを請うのが望ましい。それによって,何が研究としてあるべき形なのかを身につけることができると考えられる。
 もちろん,自分で地道に考えていくことで研究関心を見つけていくのもなしではないが,効率が悪いのみならず外した後のリスクが大きくなるように感じられる。また,自分一人で考えたことは自分にこだわりがあまりにも強く出過ぎてしまう可能性もある。
 自分の問題ではなく,その分野の発展に資する問題関心を理解することが必要だろう。ただし,あまりに王道の研究関心は競争相手も非常に多く,マンパワー金のパワーの勝負になりやすい。そういう研究室に所属していて,指導教員の研究の一端を担うならばそれでもいいかもしれないが,個人の研究としてことを進めるのであれば,それはおすすめできない。
 狙うべきはニッチな領域である。ニッチな領域を押さえてそこでてっぺんを取ることが必要。人間はやはり成果が出ないことをやり続けることは難しいが,ニッチなことであれば相対的に成果を出しやすくモチベーションも維持しやすい。モチベーションを維持し続けられるような研究関心にしつつ,成果にも繋がる部分というものを見定めるためには,他人の力も借りて自分の考えを相対化する必要があろう。
 また,ここまで未定義に使ってきた問題という言葉であるが,何が「問題」なのかは注意して考える必要がある。個人的には「今解決されないと多くの人が困ること」を問題とするのがわかりやすいように感じている。(もちろん,2つ以上の集団で決着がついていない根本問題などを扱ってもいいかもしれないが,これを扱うのは必ずしも容易ではない。)もう少しラフに,「今こういうことがわかるとみんながハッピーになること」というような点に注目すると良いかと思う。
ちなみに,「今」というのもポイントだ。ある問題について今解決する必要がないというのは緊急性が低く,人に重要性を伝えられない。ある問題が解決されればよいけど今は別の問題の方が大事,ということもある。問題は一過性のものかもしれないが,「今」だからこそ解決する価値があり,時が立てば意味がなくなる問題も往々にして存在するということには注意したい。
 ちなみに自分の専門の統計学に近づけていえば,統計を使う人の役に立つこと,というのが研究としては大切なのではないかと思っている。新しい手法を提案して,新しい知見を生み出す道具を提供し続けること,今までの道具の不備を解消してより使いやすい方法を提案することなどなどやるべきことがいくらでもある。統計の特定の分野に関していえば,こうした発想の勝負として研究テーマは数多くでてくるように思われる。
 さて,問題を「今解決するとうれしいこと」とみなすと問題設定と同程度に重要な「ストーリー」を組み立てるのが容易になる。論文の導入ではなぜその研究を行う必要があるのか,特定の問題関心についての前提知識を読者と共有し,問題が解決されないとどれほど良くないことがあるのかを示す。それが伝わればあとは妥当は方法論を使って研究を遂行すれば良い。このストーリーが伝わらないと厄介である。
 なぜその研究を行うのか,どう嬉しいのかという説得を行うことができなければ話を理解することができない。その意味で,論文を書くことは一種の説得活動であるともいえる。通常の説得と違うのは単なる感情論での説得は意味をなさず,先行研究を使って論理的に説得するということである。
 論理的な説得を行うためには問題関心に関連した大きなメッセージ,その論文を読んだ人がどのような行動をしてほしいのかといった事がいえなければならない。この大きなメッセージのために,先行研究を積上げ,必然的に疑問に至らざるを得ないように組み立てる。
 どのような「問題」であれば重要とみなされるのか,どのようなストーリーであれば説得的か,論理的飛躍が小さいか,といった点は少なからず感覚的なものにならざるをえない。(論理的な飛躍は,数学などの分野では当然非常に厳密だが。。。)なので,必要なのはそういうことが上手い人の仕事を間近で見ることが最大の学びになる。もちろん,自分で試行錯誤し査読のコメントから学ぶということも多くある。しかし,王道の展開やよくある論理のパタンなどをしっかり身につけるのも感覚がない人には難しい(自分がかなりそう)。
 いつでもどこでも「問題」,「ストーリー」,「説得」ということは頭に入れて研究を行いたいものだ。このあたりについて,もう少し考えが深まって体系的な学習方法や教育方法がわかってきたら,まとまった形にして残しておきたい。

(殴り書き終了)